雑誌掲載記事 | |
BMWER(vol.32から引用)#1 | |
アクティブカーズ 整備日誌 | |
「今回取り上げるのは、オイル漏れの話。アクティブカーズらしい面白い話が聞けたのでご紹介する。」 | |
アクティブカーズで話を伺っていると、巷でまことしやかに言われている話とは違い「本来はそうなんだ!」とあらためて気付かされることがよくある。今回取材させていただいたE30M3でも、面白い話が聞けた。それはオイル漏れに関する本当のところの話であった。 そのE30M3は、'90年式のスポエボ。走行距離の確かな数値は不明だが、プロのメカニックでもある現オーナーが20年以上に渡り所有している車両である。アクティブカーズとは15年ほどの付き合いで、修理させていただくことも時折あるそうだが、大抵パーツだけ買い求め、車検整備等はご自分でされているということだった。それが今回初めて車検整備で入庫したのは、懸案となっていたオイル漏れの整備をするためであった。漏れが起きているのは、作業の手間がかかる、タイミングチェーンのカバー。以前、アクティブカーズでオイルパンからのオイル漏れの整備を依頼された際に、分かってはいたのだが、ごく少量であったのとその時の諸事情も手伝って、次の機会に持ち越しとなっていたのである。巷では、エンジンのオイル漏れは、BMWに限らず、旧い輸入車に付きもののように言われているのは読者諸兄もご存知のはず。中には多少の漏れはあって当たり前と考えている方もかなりいるようだ。その点が気になり、小川代表にオイル漏れに対する見解を尋ねた。すると、本来の状態は漏れないものであって、それが漏れているのは、ガスケットや液体パッキンが長年の使用に伴う劣化により漏れているのだということだった。本来は漏れないものだから漏れがあれば直すべき、とアクティブカーズでは考えているのだが、そう判断するのには理由がある。 仮にオイル漏れが滲み程度で現状大丈夫でも、漏れが進行して量が増えてくるとその弊害は色々とでてくる。漏れたオイルがクーラントのホースにかかるとオイルでホースが膨らみ、クーラント漏れが起きることもある。また、エンジンを排気側にバンクさせて搭載しているため、漏れたオイルは自然エキマニにかかり、オイルが焼けて煙や異臭が出たりもする。そしてとどのつまりは、エンジンを壊すことにもなりかねないのである。漏れている箇所が一番よくあるカムホルダーからであれば、そこはガスケットではなく液体シールしか使われていないため、構造上、通常は漏れる量が増える可能性はあまりない。ところが、タイミングチェーンのカバー部分のように、ガスケットが使われた部分からの漏れは、確認した時点では少しであったとしても、ガスケットが逃げればそれに応じて漏れるオイルはどんどん増えてしまうのである。基本、オイル漏れは直すべきと考えているアクティブカーズでも、カムホルダーの場合のように漏れが増える可能性が極めて低いところに関しては、ユーザーとの相談の中で状況を見極めて次の機会に整備を先延ばしにすることはよくある。しかし、ガスケットが使われている部分からの漏れは、より大きなトラブルに発展する可能性があるため、そこだけはなるべく早急に直した方がいいと小川代表は言う。漏れが増大するかもしれないというファクターは、判断の大きな基準になるのである。ちなみに、一度直すとどの程度もつかは、一概には言えるものではないが、整備したことを忘れるくらいは漏れないと小川代表。実際、アクティブカーズでオイル漏れの処置をした中には20万kmが経過した今も漏れていない事例もあるそうである。 旧いクルマのオイル漏れは、事例としてあることだから「多少のオイル漏れは当たり前」という巷の話は、ある面では間違ってないのかもしれない。だが、少なくともBMWに限っては決して当たり前(本来)の状態ではない。まして漏れの場所を調べ状況を判断することもなしに、巷の話を鵜呑みにして、少量だからという理由だけで放置を決め込むのは、話が違う。そこはしっかりプロに診断してもらい、状況を分かった上でどうするか決めた方が気持ちよくクルマに乗れるはずだ。 |
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「オイル漏れはないのが本来。少量という理由だけで放置するのはやめたい」 | |
1.取材車の整備にあたるのは八木メカ。今回整備するタイミングチェーンのカバーからの漏れは、E30M3でよくあるところだとか。 | |
2.オーナーは現役のメカニック。整備のプロがアクティブカーズに託すのはそれだけ信頼しているということなのだろう | |
3.漏れは数滴垂れる程度だったらしいが、より酷くなる可能性もあることから今回整備に踏み切った。 | |
4.E30M3で一番よくある漏れはカムホルダーとシリンダーヘッドの間。ここは液体パッキンでシールされており、構造上、漏れが酷くなることは通常ではないそうだ。 | |
5.作業は、一応車載の状態で行えるとはいえ、タイミングチェーンのカバーのガスケットをやり直すのは、パーツの脱着だけでも結構手間。オイルパンの場合よりも費用は掛かる。 | |
6.作業で外したオイルパンとタイミングチェーンのカバー。キレイに洗浄して、古いガスケットを丹念に取り除く。 | |
7.オイルパンとタイミングチェーンのカバーで使うガスケット。作業次いでにチェーンテンショナ一部分のシールリング等も予防整備として交換。 | |
8.ガスケットを張り替えオイル漏れの整備は一段落。でも、これで終わりではない。この後、大事な作業がある。それは……。 | |
9.小川代表が一度整備すれば当分もれないというのは、作業の確かさだけでなく幾つかの工夫がある。例えば、作業で使う液体ガスケットは場所によって使い分けている。カムホルダーなどは、構造的にやり直しがきかないため、最良のものをテストして使っている。 | |
10.オイル漏れの整備を確かなものにするには、締めつけトルクの適切な管理と、テスト走行で熱を入れた後の締め増しが不可欠。小川代表が仰るには、緩すぎてもダメだし、締めすぎもダメ。適切な締めつけトルクを守ることが大事とのこと。 | |
11.こちらは小川代表のE30M3のエンジン。ご覧の通りオイル漏れはまったくない。漏れないのが本来の状態だという話はこれを見ればうなずける。 | |
12.アクティブカーズのお二人は供にE30M3乗り。オーナーの気持ちを良く理解しており、手間を厭わず、丁寧で確実な作業で応えてくれる。 | |
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