雑誌掲載記事 | |
BMWER(vol.28から引用)#1 | |
アクティブカーズ 整備日誌 | |
S14エンジンを2.7化するエンジン製作の最終回。完成したショートエンジンのその後の模様をお伝えする。 | |
前号では、エンジンの組立が終終わったところまでをご紹介した。その後はというと、日をあまりおかず車両に搭載。チェックして問題がないことを確かめたところで小川氏が信頼をおく八木メカによって慣らし運転が実施された。本来は、注意点等をお伝えしてオーナーにお任せしているものであるが、多忙などの理由で自分ではまとまった距離を乗れないという方などから依頼があれば、アクティブカーズで慣らしを代行することがあるのである。で、その慣らしは、今回1500kmを2度にわけて走行。いずれも走るのは一定の回転、速度で走ることができる高速で、1回目に500km、2回目に1000kmを走っている。その都度、エンジンのオイル交換をして汚れ具合などをみるのはもちろん、要所要所で点検しながら行うため、確実で間違いなどはあろうはずがない。2回目の1000kmを終えたところでは、1度エンジンを冷やしてからバルブクリアランスも点検したそうである。 慣らしの後は、セッティングである。2.7仕様のS14エンジンとなるとノーマルDMEでは制御できないため、V−PrOが使われている。既に2.7仕様を製作しているから、ベースデータはあるのだが、クルマの仕様にあわせてより細かく調整する必要があるのだ。そうして現車合わせのセッティングを施した結果、パワーは270ps、トルクは32.8kgf・mを記録。2.7仕様で最初に製作したエンジンは、 |
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1.車両に搭載された2.7仕様のS14エンジン。使用するエキマニは45¢、マフラーはメインが70¢とトルクを重視したカタチだ。ちなみに、280psを出した一機目の2.7仕様は、エキマニ50¢、マフラーは80¢。パルタイも少し違う。 | |
2.今回使用した2.7キット。ノーマルと重量を比べたところ、いずれも軽くできていた。設計も良いせいか、組み上がったエンジンは、振動も少なく実にバランスよく回る。 | |
3.使用したカムシャフトは、イン側292°、エキゾースト側284°。ノーマルと比べると見 た目からしてカム山が大きいが、ストリートでの使用を踏まえた選択で乗りにくさはない。ちなみに、カムホルダー側にはWPC加工が施され、カム側はモリブデン加工を実施。なんでもWPC同士というのは良くないとか。 |
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4.ヘッドは小川氏の手によりポート加工が施されている。特にエキゾースト側は鏡面のような仕上げ。バルブはビックバルブで、セット長は圧縮を落とさないように揃えている。ノーマルに比べると若干出したカタチ。 | |
5.キャブレターは、ビックスロットル加工を施したものを使っている。スロットルのエンジン側はインシュレーターにあわせて形状が修正されている。 | |
6.ピストンコンプレッサーを使い、ピストンをシリンダーブロックに入れる小川氏。組立作業の前半部の中で気を使う作業のひとつ。 | |
7.部品の組み込みは小川氏がブレンドしたオメガのオイルを塗布しながら行う。要はエンジンを一番最初にかける際の初期なじみの潤滑用というわけ。エンジンをかけるまで間があく場合は、また、別のものを使うようだ。 | |
8.ピストンのトップだしをする小川氏。この後で行うパルタイの調整もここでズレてしまっていては意味がないため、パルタイ調整ともども気を使う作業となる。ちなみに、小川氏は前回の取材後、さらにパルタイを追い込み、インテーク104のエキゾースト105にぴったり合わせたそうだ。 | |
9.モノに魂を入れるという表現があるが、今回エンジンの組立作業に立ち会って感じたのはまさにそれだった。組立作業のひとつひとつに小川氏の心血が注がれている。 | |
10.サーキットを走る2.7仕様M3。そのトルクの出方はE36のM3Cなみで、同じような加速をみせる。ちなみに、小川氏のM3も近日中に2.7仕様となるそうだ。 | |
「2.7仕様のS14エンジンは270ps、32.8kgf・mを記録」 | |
280ps、32.4kgf・mであったから、それと比べるとパワーは少し落ち、トルクの方は勝るカタチとなった。でもこの数値の違いは、今回のエンジンではトルクを重視したためだ。パルタイの数値もトルク重視に振り、また、排気系のセットアップもあえてやや細目のものを使ったことによるもので、小川氏の狙い通りなのである。何しろ270psという数値は、実にリッター当たり100psであるから、S14エンジンとしては何とも凄いではないか。 すでにサーキット走行も楽しんだというオーナーが語るところでは、もう何ともいえずイイらしい。トルクが太いからとにかく、乗りやすいということだった。なんでも、最初に乗った時は、5速でも3速、4速のような加速をするために、もうひとつギアがあるように錯覚したほどだったそうだ。また、4000回転からの加速がもの凄くて、ノーマルとはまるで別物ともおっしゃっていた。このオーナーの方は、このエンジンを作る前のステップとして、ノーマルエンジンのV-pro仕様で230psを体験しているが、その際は慣れるにつれて物足りなくなったそうだが、今度ばかりは大満足されているようであった。 アクティブカーズで製作するS14エンジンには、以前から2.5仕様があるが、そこに2.7仕様という魅力ある選択肢が加わった。小川氏の考えでは、2.7仕様でサーキットをガンガン走るのであれば、冷却系がノーマルのままでは物足りなく、またパワーが出ている分、駆動系のリスクもみておかないといけないだろうという話だった。一方の2.5仕様の方は、パワーが2.7仕様よりも低い分、ノーマルの冷却系のままで富士などをガンガン走っても油温も110°C以内に収まるそうである。 2.7仕様のエンジンは、製作当初からサーキットを主体に考えたものではなく、あくまでストリートユースを主体に考えたものである。なんといっても、トルクがある分、高回転までまわさなくても済むから、エンジンの耐久性という面で圧倒的に優位なのである。また、ノーマルのS14エンジンの場合は、夏場にエアコンを入れるとトルクが細いぶん発進時に気を使うが、2.7仕様だとそのへんが圧倒的に楽になる。もちろんS14らしい回す楽しみも備えているし、サーキットをたまに軽く遊ぶくらいは、問題なくこなせるというから、ストリートユースには最高のエンジンとなるのではないだろうか。 |
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