雑誌掲載記事 | |
BMWER(vol.25から引用)#1 | |
アクティブカーズ整備日誌 | |
アクティブカーズ代表の小川氏は、BMW正規ディーラーの元工場長。BMWの深い知識と確かな整備技術を持つアクティブカーズには。全国各地からBMWがやってくる。当コーナーでは。そんなアクティブカーズの日々の業務の一端をご紹介する。 | |
整備に主軸を置いているアクティブカーズだが、その一方でエンジンチューニングも行っており、ユーザーから好評を得ている。今回からは、E30 M3の 2.7仕様のエンジン制作をご紹介していく。 | |
1.ベースとなるS14エンジンは、アクティブカーズで別途用意したもの。車両に乗っている方のS14は、絶好調の状態にあるため、2.7エンジン換装時に降ろしてそのまま保管する予定。2.今回の車両オーナーは、長い付き合いがあって信頼関係のある方。オーナーから相談を受けて小川氏から2.7仕様を提案し、製作することに至ったそうである。基本エンジンの製作は、夏場はやらないため、年間に製作されるエンジンは極わずか。整備業務が立て込む年は、エンジンの製作に集中できないためやらないこともある。3.こちらが今回使う、2.7キット。信頼性のある海外製で、小川氏がお墨付きを与えたもの。価格は現在のレートで約80万円。4.左の2.3ノーマルクランクに対し、2.7キットのクランクは、カウンターウエイト部分が空気抵抗低減のため回転方向に対し斜めにカットされている。また。重量面でもノーマルの19.7kgに対し17kgと軽量となっている。5.左は2.3のノーマルコンロッドでI断面の形状になっているのに対し、2.7キットの方はH断面が採用されている。6.左は2.3ノーマルピストン、右は2.7キットのもの。ハイトの違いの他、ノーマルは鋳造製であるのに対し、2.7の方は鍛造製で重量面でも軽量。ただ、鍛造ピストンの場合は、冷間時のクリアランスが少し広いため暖機が必須。アクティブカーズのユーザーは皆さんAC流の暖機方法を守っているので特に問題もないはず。7.ピストンシールは日本製のため、後々でも簡単に入手することができる。8.バルブは価格面でも手頃なビッグ・バルブを組み込む予定。9.カムはシュリック製のハイカムを入れる。イン側は292度、エキゾースト側は284度。ちなみにノーマルは両者共通で244度だ | |
「整備を基本とするアクティブカーズが製作するチューニングエンジンとは?」 | |
アクティブカーズの小川氏から、今年はエンジンを製作するという話を聞かされていたが、間もなく製作に入るという連絡を受けて取材にでかけた。 ガレージで待っていたのは、遥か北の地のナンバーをつけた黒いE30M3とベースとして用意されたS14エンジン。今回製作するエンジンは、S14エンジンの2.7仕様である。言わば、バリバリのメカチューンを施したエンジンである。 読者諸兄であれば、アクティブカーズが何よりも整備を大事にし、また、ショップ業務の主軸に据えているかはご承知だと思う。小川氏自身がよく仰るのは、E30M3というクルマは、本来正しい整備をしてやれば、エンジンも静かだし、速いんだということ。実際、アクティブカーズに持ち込まれたE30M3が本来の性能を取り戻し、オーナー自身が驚いてしまったという話は、よくあることで珍しいことじやない。 では、基本は整備というアクティブカーズが作るチューニングエンジンとはいかなるものだろうか。すると小川氏はこう答えた。「レースなどのエンジン屋さんが作るものとは違うよね。ウチのは普段乗りができるエンジン。気軽に、毎日通勤ににも使えるようなエンジンですね。レース用みたいに、何km乗ったらオーバーホールして下さい、なんてこともありません。もし、先々で整備をするとすればピストンリングですが、それは日本製で簡単に手に入りますから」通勤や普段使いも気軽にできるチューニングエンジンとは、何とも興味をそそられる。 現在、アクティブカーズで製作し、ユーザーに提供しているS14のチューニングエンジンと言えば、ノーマル排気量を別にすると2.5仕様もあるが、今回作る2.7仕様は、その2.5仕様がかすむほどのパフォーマンスを持っているという。本件より先に製作した2.7仕様では、パワーにして280ps、トルクは32.4kgmを計測しており、その走りは、車体の軽さも手伝ってE36のM3Cについて行けるほどだったそうである。逆に、M3Cの6気筒に対し、4気筒ということもあって、パッと踏んだ時のレスポンスは、M3Cを上回るそうである。 それほどのポテンシャルだから、260psの2.5仕様が物足りなくなってしまったとは、自身も2.5仕様に乗る小川氏から出た言葉である。さらに、2.5仕様で5000rpm、6000rpm回しているのが、2.7仕様だと大体3500rpmくらいで出てしまうそうだ。つまり、回さなくてもいいというワケで、それはエンジンの負担も少ないということである。しかも、2.5仕様と比べてもエンジンの振動がより少なくバランスがいいとも仰る。コスト面でも2.5仕様と2.7仕様では少し上乗せするだけで済むというから、2.7仕様はコストパフォーマンスの良いエンジンということになる。 なんともいいことずくめの2.7仕様だが、皆さんにオススメしている訳ではない。始めにも言ったように、整備が行き届いたノーマルのS14は、ガチャガチャいうエンジン音もしなければ、速さもある。そこにはS14特有の確かな魅力が存在する。だから、ノーマル排気量に拘りのある方には2.3仕様でのチューニングも行っている。 その一方、ノーマル排気量では、トルクが薄い所があるのも事実で、アクティブカーズでは、そこに物足りなさを感じるユーザーやよりパワーを求めるユーザーの要望に応えチューニングエンジンを提供している。ただし、初めてのユーザーには決してオススメはしない。それはクルマの状態が判らないから。要はエンジンだけよくしても他に問題があったのでは仕方がないからである。何より、S14本来の持ち味を楽しまずして、エンジンを作ってしまうのは、なんとも勿体ない話でないか。 さて2.7の製作はこの後ベースエンジンを分解洗浄し、加工作業に入る予定である。次号ではその加工作業をお伝えしたいと考えているので乞うご期待。 |
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