雑誌掲載記事 | |
BMWER(vol.22から引用)#1 | |
アクティブカーズには、クルマを乗り換えた際に、点検整備をして欲しいとクルマを持ち込む方が少なからずいるそうである。今回はそうした一台であるE39をご紹介する | |
「乗り始めにクルマの状態を把握することは大きな意味がある」 | |
某月某日アクティブカーズの小川氏のもとを訪れると北陸ナンバーのE39が入庫していた。オーナーは、以前から付き合いのある方。父親から譲り受けたE39に乗るにあたり、点検・整備をして欲しいと、持ち込まれたものである。アクティブカーズでは、そのようにクルマを手に入れ、乗り始めるにあたっての点検・整備の依頼が割とよくあるのだという。入手先こそ、販売店であったり、個人売買てあったりといろいろだが、要は調子良く乗りたい、安心して乗りたいということらしい。特に、E30など旧クルマをあえて手に入れる方は、そのクルマが好きで選ぶ方が多いワケで、そういう気持ちがより強いのではないですか、と小川氏は言う。そのE39は、走行距離が19万kmの525i。小川氏がいつもの手順にしたがい、点検診断したところ、エンジンやミッションといった機関の調子は良好であった。だが、幾つか問題点もあった。主なものとしては、ABSの点灯、電動シートの傾き、ロールプライドの作動不良、オイル漏れ、パワステのプレッシャーホースの滲み、ステアリングラックのブーツ破れなど。オーナーに提出される実際の見積書には、それらの他にも、小川氏がすみずみまで点検し、みたままのクルマの状態が報告される。その中には、今は大丈夫だがこの先問題になりそうな部分も予防整備箇所として盛り込まれている。 その見積書を元に、オーナーと相談した結果、今回は、走行上差し支えのあるもを最優先して直すことになったそうだ。不具合の明らかな、ABSの点灯の元であるハイドロユニットのコントロールユニット、ステアリングラックのブーツのやぶれは当然対処する。オイル漏れについては、酷くなると排気管に垂れて最悪火災を引き起こすヘッドカバー、オイルレベルゲージ、オイルフィルターボディ部分を整備。また、今の所問題はないが、燃料ポンプ、アイドルプーリー、ある部分のブレーキパイプも対処したそうだ。190,000kmを走った燃料ポンプは距離的にみて、いつ不具合がでてもおかしくない状況で、しかも不具合が出る時はいきなり止まってしまう部分。同様に、アイドルプーリーも焼き付くとベルトが切れてしまう。また、交換したあるブレーキパイプとは、ABSのハイドロユニットからリアにいく部分。近くに排気管があり、その熟で破裂することがあるためだ。これらはいずれも予防整備である。アクティブカーズの整備では、そんな予防整備を重要視している。特に、旧いクルマの場合は、今大丈夫だからと壊れた所だけを直していると、結局毎月何かがダメになって、気がつけば1年の半分は工場ということにもなりかねないのである。そうなると、オーナー自身も好きで手に入れたものの、だんだんそのクルマが嫌になってしまう。今後、壊れるものを見極め先に対処することで、問題の拡大も抑えられ、結果的にコストも抑えられるのである。 一方、不具合はあるものの、見送ったものもある。上げなければ問題のない電動シートの傾き、使わなければいいロールブライドの作動不良がそれ。パワステのプレッシャーホースの滲みについても、現状で確かに滲みは起きているが、さほどでもないことから、今回は見送った。 乗り始めに点検整備をすることの意義とはいかなるものだろうか。人によっては、今大丈夫だからそれででいいのではないか、と考える方もいると思う。でも、それによってその時点のクルマの状態を知ることが出来るのは、大きなメリットだと思う。今回のE39のケースで言えば、パワステのプレシャーホースにオイル漏れがあることが分かっていれば、ある朝、駐車場から出ようとしてハンドルを切ったらギーギ一音がしても、これはショップで言われたプレッシャーホースだ、と冷静に対処できる。でも、知らなかったとしたら、何がおこったか分からず、対処に困り−騒動になってしまうのは想像に難くない。実際、E39のオーナーには、そうなったら、どこでもいいからパワステオイルを買って補充するよう伝えているそうだ。それで、1週間も経たないうちにまた音がでるようなら、修理。そうでないなら、様子をみながら次回の点検に合わせて修理してはどうか、そういう所まで話をしているそうである。アクティブカーズのように、そのクルマを熟知し、クルマの良し悪しを見極めることができ、予防整備の判断も的確にできるショップという条件は付くが、乗り始めの点検整備は十分意義のあるものではないだろうか。小川氏日く、“ショップによっては、旧いからこんなものですよ、という表現をしたりしますが、ウチではそういうものです、とは言いません。本来はこうで、このクルマはこういう状況です、とちゃんとお伝えします”とのこと。クルマ本来の良い状態で乗りたい方にとっては、アクティブカーズは、この上なく心強く頼りにな るはずである。 |
|
1.新たに乗り始めるにあたり、点検・整備をして欲しいと持ち込まれたE39 525i。走行距離は19万km。2.運転席の電動シートは上にリフトさせると傾く不具合があった。今回は修理しなかったがアクティブカーズでは、分解しての修理が可能。3.リアのロールブラインドも作動不良。4.その原因はこの小さなスライディングピース。ディーラーならアッシー交換となるが、小川氏はアルミ材を加工して直してしまう。5.父親が乗っていた時から時々エンジンが吹けなくなり、エンストすることがあったらしい。当時父親も見てもらったようで、その時はクランク角センサーやカムシャフトセンサーの要交換という診断だったとか。だが、小川氏の診断ではそれらセンサーは今のところ特に問題なし。で、どうしたかと言うとエアフロを外してホットワイヤー部分を清掃。それでその症状はでなくなったそうだ。6.オイル漏れもE39に多いトラブル。排気管に垂れてしまうヘッドカバーの他、オイルレベルゲージとオイルフィルターボディの漏れは対処した。いずれもガスケットやオーリングのゴムの劣化が原因。7.パワステのプレッシャーホースにも滲みがあった。拭き取ってしばらくするとまた滲んでいるので漏れがあるのは確か。取りあえず微量であることからここは様子をみることに。8.ステアリングラックのブーツは完全に破れていた。そのままではステアリングギアボックスをダメにしてしまうため、即交換。9.本来の状態を含め新旧のBMWを熟知している小川氏のアクティブカーズでは予防整備を重要視している。状態をきちんと見極められるからこそ、適切なアドバイスができ、また無用なトラブルを避けることができる。 | |
雑誌掲載記事メニューへ | ←BACK NEXT→ |