雑誌掲載記事 | |
BMWER(vol.20から引用)#1 | |
1.事の起こりは配管のひび割れによるガス漏れ。対処の遅れがトラブルを大きくした。2.E30の配管は鉄のためガス漏れから錆が発生してしまった。ちなみに3シリーズだとE36以降はアルミが使われている。3.ェバポレータからの低圧側の配管が繋がるコンプレッサーのフィルターには錆の不純物がたっぷり。4.オーナーと相談の上コンプレッサーとコンデンサーは清掃により対処。使えるものは使う。5.錆の不純物がエアコンサイクル全体に及んでいるドライヤーは迷わず新品と交換。6.エキスパンションバルブも新品と交換。ここに不純物が詰まると当然効きは悪くなる。7.エバポレータは内部の汚れ具合や一度も交換してなかったことから程度の良いものに相談の上交換換。 8.そのエバポレーターとエキパンはセンターコンソール奥にある。左ハン車だと比較的作業しやすいが・・・・・・。9.エアコンをあまり使わない時期だからこそそこに目を向けて欲しいという小川氏。 | |
「冬だからこそエアコンに注意を!」 | |
この寒い時期にエアコンの話?なぜ?と、思われたかもしれないが、ちょっとお付き合いいただきたい。 確かにイメージ的には、冬場に用のないように思えるエアコン。でも、意外とその出番は多い。人によっては、意外どころか欠かせないと言う方もいらっしやるだろう。そのエアコンの冬場の用途とは、除湿だ。つまり、ウインドウの曇りを除去するのに欠かせないのだ。そんな使い方をする方だと、いつものようにエアコンスイッチを入れても曇りが取れず、すぐショップで見てもらうと、エアコンがダメだったということがアクティブカーズでもたまにあるそうである。何を言いたいのかと言うと、夏だけでなく、他の季節でもエアコンを使うことは、その行為がエアコンの点検にもなるということである。というのも、アクティブカーズの小川氏によると、夏場使えたから安心してそのまま冬を越し、春先になってエアコンをつけたら効かなかったというケースがとても多いそうなのだ。問題なのは、オーナーが知らない所でトラブルが起きてから時間が経過してしまうことだ。同様に、寒い時期に不調に気づきはしたものの、この時期はあんまり必要ないからと先延ばしにするのも、実にまずいことなのだ。エアコンに限らず、不調を見逃したり、あるいは気がついても放置すると、事態はより深刻化することが多々あるのである。トラブルは進行するのだ。 取材時に、小川氏が取り組んでいたエアコン修理は、まさにそうしたケースであった。クルマはE30M3。そのオーナーは、夏の初めにエアコンが調子の悪いことに気づいたものの、忙しさもあって我慢し、小川氏の元に持ち込んだのは不調を感じてからずいぶん時間が経過していたそうである。小川氏がクルマを調べると、コンプレッサーからコンデンサーヘ行く高圧側の配管のゴムホース部分が劣化でひび割れしてエアコンガスが抜けていたそうである。異常はそれだけではなかった。ホース内部が錆びており、さらにエアコンサイクルにある部品を点検していった所、配管内で起きた錆の不純物がエアコンのサイクル全体に回っていたのである。 その状況を理解していだくために、エアコンサイクルを簡単に説明しておく。エアコンサイクルは、コンプレッサー、コンデンサー、ドライヤー、エキスパンションバルブ、エバポレータという部品で構成されている。各パーツは配管で繋がり、円のように循環するひとつのサイクルを形作っているのだ。サイクル内には、エアコンガス(冷媒)が入っており、各パーツの働きで液化と気化を一巡ごとに繰り返しているのだ。エアコンが冷えるのは、そのまさに液体から気体に変化するときの熱を奪う潜熱という原理を利用しているのである。 話しを戻すと、そのサイクルは本来密閉されて真空状態にある。ところが、ホースのヒビ割れでガスが抜け、大気となり、鉄の配管内部が錆びてしまったのである。今のクルマはアルミに置き換わっているが、E30の時代は、アルミ材がまだ高価だったためか、鉄なのである。オーナー氏も直ぐ対処できなかったやむにやまれぬ事情があったのかもしれないが、時間の経過とともにトラブルが進行してしまったのだ。エアコンサイクルの中にあって、液体冷媒を一時的に蓄えると同時に水分と不純物をとりのぞくドライヤーもあまりの不純物でろ過能力が落ち、その結果サイクルの先にあるエキスパンションバルブが構造上針のような細い経路のため、錆の不純物で詰まってしまったそうである。さらにその先にある、エバポレータやコンプレサーでも錆の不純物が確認できたそうである。 事がここまで及ぶと、基本はエアコンサイクルの部品をすべて交換することになってしまう。エアコンの部品は、各々高い機能性をもった部品でもあり、部品代だけでざっと35〜40万円。加えて工賃も交換作業に手間がかかり、それなりのものになってしまう。エアコンは高い、ということは漠然と知っている方が多いと思うのだが、冬場は使わないからと放置するケースが実に多い。使わない時期にこそエアコンに注意をむけ、点検の意味でも時おり使ってみる方が、機械的にも良い調子を保てるはずだ。そして、エアコンの不調は早めに対処するという風に意識を変えていただきたい。もちろんエアコンのトラブルには、いろんなものがあるから、今回の事例のようなことにならないこともある。でも、エアコンの不調は即対処しないと高くつくことがあることは覚えて置いて欲しい。今回の事例はE30の配管故の錆が原因であったが、アルミ配管の他車でも水分や不純物で、不調をきたすことがあるので、早めの対処がなによりも賢明である。 |
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