雑誌掲載記事 | |
BMWER(vol.19から引用)#1 | |
1.診断で現れた“15.イグニッション回路モニター”の表示。2.その診断に元づき最初に見たのは大元のDME。3.小川氏は配線図を元に地道に点検し問題部位を追いつめた。4.問題のあったイグニッョンのグランドは、初見で気になっていた部分。5.調べると本来エンジンに落ちているはずのグランドが別のところに落とされていた。6.グランドを本来のカタチに配線し直すとついに“15.イグニッション回路モニター”が消えた。7.もう−つの問題はイグニッションコイルのキャップの不良。奥の純正はプラグのターミナルにしっかり当たるが、手前の社外品は奥が深くターミナルに触れていなかった。8.その異変に気づいたキッカケは点火プラグのターミナルが白く焼けていたことだ。9.この問題は早めに気づいため正常が確認できている純正のイグニッションコイルに交換し、トラプルルシュートを続けた。10.問題箇所を直すと診断しても何もでなくなった。 | |
「今回のトラブルはメーカーのマニュアルにも載ってない稀な事例」 | |
前号を見逃した方のために少しおさらいしておこう。 アクティブカーズに持ち込まれたE36M3は、オーナーが色々手を尽くしたもののいっこうに改善がみられないという厄介なクルマ。その症状は、低速域から中速域にかけての狭い回転域でボソボソと被ったような加速不良が現れること。もうひとつは、冷間時のスタート直後の500mくらいまでが、ギクシヤクしてスムーズに走れないというものであった。小川氏がコンピュータ診断を実施したところ、15.イグニッション回路モニターと23.イグニッションNo.2、52.イグニッションNo.5というという診断がでた。要はイグニッション回路に問題があって、2番と5番の気筒が失火しているというのである。ただ、2番と5番の失火については、暖まると問題が解消し、冷えるとまた出るということが再診断で確認できた。そこで、まず小川氏が着目したのは、イグニッション回路を司るDME。手始めにそれが正常なのかどうか正常な DMEと置き換えてみることにしたことまでお伝えした。さてその結果は、同じように15.イグニッション回路モニターという診断がでた。つまりDMEは正常で、そこ以外のイグニッション回路に問題があるという訳である。ここから小川氏の地道な作業が始まった。 ところで、E36の世代のコンピュータ診断は、E型の最終モデルやF型のコンピュータ診断とはまるで違っている。今のクルマは、完全にコンピュータ主導であって、メカニックはその手足となり、細かい指示にしたがって見ていけばいいのだが、E36M3の場合は、自分が見たことの裏付けとして診断機を使うだけなのである。だから、診断機が異常があると示している、イグニッション回路を細かく地道に点検し問題を絞っていくしかないのだ。その過程で15.イグニッション回路モニターの表示が消えたとしても問題の症状が解決するのかどうかは分からないが、まずはそこを押さえないことは、前にすすめず問題の核心には近づけないのである。 結末を先にいうと、小川氏はイグニッション回路の殆どを点検し、導通や抵抗はもちろんのこと、電圧やその電圧が揃っているかどうかまで調べ、問題のないことの裏付けをとったのである。そして残るはグランド(アース)だけ、というところまで追い込み、調べた所、なんとグランドのポイントが違っていたのだ。本来はエンジンに落ちているものが、社外アース強化パーツのグランドとともにボディに落とされていたのである。そのグランドを本来のカタチに戻し診断をかけてみるとそれまで何をやっても消えなかった15.イグニッション回路モニターの表示がキレイに消えたのである。 突き止めたことは、もうひとつある。それはイグニッションコイルのキャップの不良。装着されていたイグニッションコイルは社外品で、プラグのターミナルにしっかりハマらずに、少し浮いた状態だったのだ。前号で触れた点火プラグのターミナルが白くなっていたのは、2次電圧で火花が飛んでいたためだった。そこで火花が飛んでいるから、時に失火していたのだ。「原因はちょっとしたことだろうなという感触は当初からありましたが、やはりグランド線一本が問題でした。グランドが本来のポイントに落ちていませんから、DME側は点火がちやんとできてないという判断をし、15.イグニッション回路モニターの診断がでたわけです。本来なら点火したという報告がDMEに来るわけですがそれがこないから、異常を感じこれでいいのかなということでより具合が悪くなり、かつ、イグニッションコイルのキャップの不良による失火とが、たまたま合致した時に不具合としてでていたのではないかと思います。今は診断しても何もでませんし、冷間時からのスタートなども問題ありませんから」と小川氏は分析する。 ちなみに、診断で終始現れた15.イグニッション回路モニターの頭の15番というのは、ディーラーが保有するマニュアルの番号を示している。小川氏はトラブルシュートの過程で、診断結果、症状、車両の状態から今回のトラブルがかつて見たことがない、異例なトラブルと感じ、ディーラーに問い合わせたそうである。ところが、そのマニュアルの15番は空白だった。つまり、前例のない極めて希有なトラブルだったのである。オーナーが何をやっても直らなかったのもむべもない話で、あらためてアクティブカーズの力量を見せていただいた案件であった。 |
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