雑誌掲載記事 | |
BMWER(vol.18から引用)#2 | |
BMWの専門店であるアクティブカーズは専用のDIS診断機を完備している。トラブルシュートには診断機が必要不可欠なのである。 | 手慣れた手つきで診断機をセットアップする小川氏は、メカトラブルだけでなく、電気系のトラブルシュートも得意としている。 |
DIS診断機で診断した結果がこちらの画面。小川氏がまず注目したのは、回路モニターという部分。2番と5番の表示は、再診断では消えた。 | DIS診断機の診断をもとに、まずは一番の大もとであるコンピューターを正常な動作が確認されているものと交換してみて様子を見ることに。 |
トラブルシュートでは電気回路図も必要不可欠。診断結果にもとづき経路をひとつづつ点検し、トラブルの範囲を確実に絞り込んでゆく。 | 点火プラグはオーナーが交換済みということであったが、万全をきすため確認すると、ターミナルに白い腐食が見られた。問題はないようだが……。 |
「トラブルシュートは1つ1つ点検し、原因を絞り込んでいく」 | |
アクティブカーズの代表小川氏の手腕を見込んで持ち込まれた車両は、95年式のE36M3Bで、走行距離はおよそ7万4000kmの個体。この車両の問題は、ある特定域における加速不良。最初にその症状が現れたのは、去年の初めの頃だそうである。2車線で狭い道路の両側に壁がある通りで、普通にアクセルを踏んでいったら、1700〜2800rpmくらいの領域で、ボソボソとかぶったような音が聞こえたそうである。それで初めて異変に気付いたのだという。でも、その領域を過ぎて3000rpm以上になるとすごく軽快にまわり、先ほどの不調は、みじんも感じられないというのだ。 さらに、オーナーが色々試したところ、エアコンをかけると症状が薄くなり、空吹かしではそれほど出ないそうなのだ。また、冬の間は症状がいったん緩和し、それで一瞬直ったのかと勘違いしたそうである。ところが、暖かくなり、外気温が20度を越えるようになった頃から、再び、症状が出始めたというので ある。 あともうひとつ、オーナーが気になっている症状があるという。それは、一晩おいて、エンジンが完全に冷えた状態で始動して直ぐに走り出すとだいたい500m手前ぐらいまではエンジンがギクシャクして回転が上がらないそうなのだ。で、回転を上げてギアチェンジすると、アフターファイヤーみたいに、1、2回スパンスパンとマフラーから音がでるのだという。それは少ししてエンジンが暖まれば、その症状は消えるのだそうである。この症状も、特定回転域の加速不良同様に、誰が乗っても必ず起こり、再現性があるということであった。 このM3Bに対し、小川氏がまず行ったのはコンピューターでの診断。手慣れた手つきで、DIS(診断機)を車両に接続する。その結果は、イグニッション回路に問題があって、2番と5番が失火しているという診断であった。「2番と5番が調子わるいとでましたが、一番の問題は“回路モニター”という部分です。回路モニターということは、DMEの中に入っているということなんです。ですから一番最初にやらなければならないのはDMEです。まずそれを交換して様子を見ましょう。イグニッションコイルの2番、5番というのは、今現在は正常にもどっているので、冷間時の燃料が濃いときだけカブる、ということです。その時にちゃんと点火できてないわけです。で、暖まると消えた。再現性があるというのはそのとおりですね。」と小川氏。 アクティブカーズのトラブルシュートは、先入観やただの経験則で答えを導くわけではない。問題のある場所の範囲を狭めるように、ひとつひとつ点検してゆくことで、徐々に絞り込んでいくのである。時間と手間はかかるが、問題解決のためにはさけては通れないのだ。仮にその作業を省き、お客さんにクルマを戻した後でまたその症状がでたのでは、取り返しがつかないのである。今回はここまでとして。次回、その結末をお伝えしたい。 |
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