雑誌掲載記事 | |
BMWER(vol.13から引用)#1 | |
アクティブカーズの代表小川氏は、BMW正規ディーラーの元工場長。その確かな腕を頼って全国からBMWがやってくる。当ページでは、小川氏が日々の業務の中で手がけた整備やトラブルシュート、チューニング.etc・・・など興味深い事例をご紹介して行く。 | |
ただコンバートするのではなく、ユーザーのひとつひとつの細かい要望に的確に応えることができるのは、高い技術をもつアクティブカーズならでは。 | |
今月のお題 E30M3エンジンコンバート=いきさつ編= |
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4月某日、アクティブカーズ代表の小川氏から作業が始まった、という知らせをもらい、山梨県は南アルブス市のアクティブカーズを訪ねた。整然と片付いたガレージの一角では、小川氏とメカの八木君がE30M3のエンジンルームからS14エンジンを降ろすべく、作業にあたっているところであった。 E30M3に6気筒のシングルカムを載せる。しかもミッションはオートマチック。小川氏にその話を聞いた時、想像力に乏しい自分は、すぐにその意味というか、狙いがつかみきれなかった。それがオートマチックではなく、マニュアルミッションというのならば話はわかる。でもM3のアイデンティティである魅力ある4気筒を降ろし、オートマの6気筒を載せたM3にいったいどのような楽しさがあるのかがイメージしきれなかったのだ。わずかばかりの想像力を駆使し、たどり着いたのは、E30M3が好きで、味わい尽くした年配の方がもっと気軽に楽に乗れるようにしたいのだろうか?だから、高回転型の4発を降ろし、トルクのある6発を載せるのではないか?というところまでだった。そんな訳で、小川氏には、真っ先に今回行うコンバートの経緯を聞いてみた。 「当初はM3をオートマチックで乗りたいというお話でした。相談を受けて考えてみましたが、幾つか問題がありました。まずは電子制御の問題です。オートマチックミッションは電子制御されているため、例えばスロットルの開度とかをDMEを通じて入れなければなりません。でも、古いM3のDMEでそれをやるのは難しいんです。しかもオーナーさんは、すでにE30M3を所有しているお方。そのS14エンジンは私がチューニングさせてもらったもので、排気量こそノーマルと同じ2300で変わりませんがリッター100psを出しているので、頗る速く、また完調な状態にありました。仮にコストのかかる社外のフルコンを使い電子制御の問題をクリアしたとしても、ベース車のS14エンジンのままオートマチックミッションを入れれば、より遅くなるのは明らかでしたから、それではその方に満足してもらえないことは長いお付き合をさせてもらっていますから、容易に想像できました」と小川氏は当時を振り返る。そこで小川氏の方からひとつの案として話をしたのが、その方がもう一台所有しているE30 325の6気筒エンジンを使うことであった。そのシングルカムの6気筒もまた、小川氏がチューニングを施したエンジンであり、オーナー自身も大いに気にいっていたものだったからだ。「M3をそのままオートマにしたとしたら、同じオートマの325の存在意義がなくなります。作り込んだ、そのエンジンを無駄にするのはもったいないですから、それをオートマごと使いませんか?と私から提案させていただきました。その6気筒は発進でうかつに踏むとホイールスピンをするようなエンジンで、オートマチックでも十二分に楽しめますからね。私どもはお客さんにかわってお客さんの要望をカタチにすることが仕事です。しかし、お金をかけさせて後悔させることはしたくありません。やって良かったと思ってもらてこそ自分たちは先があると思うんです」と小川氏。提案を聞いたオーナーさんにも、それはいい考えだと賛同してもらえたことで、今回のコンバート計画は始まった。 ちなみに、オーナーさんがE30M3をオートマチックにしたいと思ったのは、すでに1台チューニングしたものを所有しているというだけでなく、気軽に乗れるクルマが欲しかったためのようだ。選択肢としては無数にある他のクルマではだめで、好きなE30M3でというのは譲れなかったようである。気軽に乗れるというキーワードは、オーナーさんが住んでいるのが北海道という土地柄が関係している。雪の降る冬場になると、イジったM3はガレージに仕舞うため、その間、気軽に乗れるクルマが欲しかったのだ。加えて、奥様にもE30M3に乗ってもらいたいという思いがあったこともオートマチック化を後押ししたようだ。 コンバート作業は、325の6発を補機類、駆動系ごと移植するカタチで行われるのだが、作業にあたっては、オーナーさんから幾つか要望があったそうだ。まず一つは、これまで大事にしてきた思い入れのあるクルマだから、自分が触れたシート、内張り、フロアカーペットなどの内装類と、乗り味が気に入っているショックアブソーバー&スプリングはすべて移植すること。そして、ATのシフトレバーはガングノップを使い、ブーツを被せることで一見マニュアルミッションのようにしたいということであった。さらにメーターパネルにシフトのインジケーターを設けて欲しいと言われているそうだ。むろんそれは、奥様が運転することを考えての配慮でもある。取材時点ではそのインジケーターの処理は、考え中とのことであったが、メカだけでなく制御系をはじめとする電気系も得意とするアクティブカーズだけに、どのようなものを作ってくるのか非常に楽しみだ。次回は、作業が進展しているはずなので、コンバートの詳細をお伝えする予定である。お楽しみに。 |
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