雑誌掲載記事 | |
BMWER(vol.12から引用)#1 | |
アクティブカーズの代表小川氏は、BMW正規ディーラーの元工場長。その確かな腕を頼って全国からBMWがやってくる。当ページは、小川氏が日々の業務の中で遭遇した事柄をご紹介していく。 | |
今月のお題 254Sと234Sの違い |
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前回は、不調を抱えたE66の整備の顛末をご紹介したが、今回は趣向をかえてスポエボの2.5L(25 4S)エンジンとノーマルの2.3L(23 4S)エンジンの違いについて分かりやすいように写真を主体にご紹介したい。 BMW専門店であるアクティブカーズは、整備を主体とするショップではあるが、小川氏の組むエンジンの良さを知って、エンジンのO/Hやチューニングの依頼が来ることもめずらしいことではない。先だって入ってきた、フルO/H依頼のエンジンが、スポエボの23 4Sであった。 この23 4Sについては、ボア・ストロークが違うとか、カムシャフトが違っている、といった大まかなことはご承知の方が多いと思う。だが、実際のところシリンダーヘッドのポートがどういう風に2.3Lと違うのか?カムはどう違うのか?バルブは?ピストンは?となった時に明確にこうだ、と答えられる人はどれ程いるだろうか。 小川氏は、そうした細かい部分について、誰にも見やすく分かりやすいカタチで、違いを明確にしておきたいと予てから考えていたこともあって、今回の企画が実現した。ご紹介する写真は、作業に取り組みながら、小川氏自らがシャッターを切り、撮影したものである。それは非常に手間のかかることではあるが、今後エンジンを作る上でも参考になると考えたためである。 ただ小川氏自身は以前からスポエボの内容を承知しており、また、2.3Lを何機もイジっているので、今回のことで特に発見というものはないそうだ。でも、スポエボのエンジンというのは、2.3Lをイジる上でこうだったらな、ということが全部やられているとおっしゃる「2.3Lのクランクをもう一寸軽くしたいんだよな、と思っててスポエボをみると現に軽くなっている。ピストンを冷やすのにオイルジェットが欲しいな、というのがちゃんと付いていますよね」と小川氏は言う。 ノーマルの2.3Lとスポエボの2.5Lとの各部の違いを見て思うのは、スポエボの2.5Lがただ排気量を増やしたものではないということだ。両エンジンは、外見にこそ違いはないが、中身は別物といえる。やはり、スポエボはE30M3の完成形と称されるだけあって、メーカーが本気で作った、レースに勝つためのクルマなのである。 |
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まずはエンジンの吸気側の入口となるコレクタータンク内のファンネルを比較してみる。上が2.3L、下が2.5L。 | ファンネルは全く同じものだった。その証拠に製造の番号もー緒。ともに1 315 264.9という番号が読み取れた。 |
念のためスロットル側の内径を計測してみた。写真は2.5Lの方だが、2.3Lの方も内径は47.60mmで完全に一緒。 | スロットル入口からバタフライを見た。右の2.3Lに対し左の2.5Lはシャフトとネジ頭の形状が平らに近くなっている。 |
次にスロットルの入口側の内径を計測してみた。まずはノーマルの2.5Lから。その結果は46.00mm。 | こんどはスポエボの2.5Lの方を計測。結果は48.00mmで、ノーマルの2.3Lよりも2.00mm口径が大きい。 |
スロットルをエンジン側から見た比較。右の2.3Lより左の2.5Lの方が大きく、ビックスロットルであることが分かる。 | 両スロットルボディに2.5Lのインシュレターを付けると違いは明らか。右の2.3Lはボディが見えている分小さい。 |
ここからはエンジン本体を見ていく。写真は2.3Lのインテークポートをスロットル側から見たものだ。 | 同じく2.5Lの方のインテークポートを見たもの。2.3Lの方と比較すると、明らかに形状が違うことが分かる。 |
次に計測したのはインテーク側のバルブの傘の部分だ。写真は2.3Lのもので、直径は37.00mmだった。 | 対して2.5Lは直径38.45mm。ここまで見てきただけでもスポエボは空気をより取り込もうとしていることが分かる。 |
今度はエキゾースト側のバルブを見てみる。計測するのはやはり傘の直径で、2.3Lの方は32.00mmであった。 | 一方、2.5Lは直径32.10mm。2.5Lのヘッドは、エンジンチューンで言う所の“ビッグバルブ化”されている。 |
次にピストンを見てみる。まずは2.3Lの重量を量ると457.3g。なお、直径は93.44mmであった。 | 同様に2.5Lのピストンを計測すると、重量は454.Og。直径は94.51mmだった。リセスも2.3Lとは少し違っている。 |
続いてはクランクシャフトを比べてみる。ノーマルの2.3Lの重量は、19.8kgぐらいであった。 | 対してスポエボの2.5Lは約17kg。ともに高回転で有利なフルカウンターだが、より上を意識していることが伺える。 |
次はIN側のカムシャフトを比較。右の2.3Lは244度。左の2.5Lは274〜276度くらい。EX側は一緒であった。 | 次はオイルポンプ。見た目は同じでも、スプリングが右の2.3Lはシングル、2.5Lはダブル。それで油圧を上げている。 |
今度はフライホイールを見てみよう。写真は2.3Lのもので、重量はおよそ8.2kgであった。 | 一方、2.5Lのフライホイールの重量は、およそ5.3kg。この重量差からも両者がどこを向いているのかが伺える。 |
2.5Lのシリンダーブロックには、ピストンを冷やすためのオイルジェットが装備されている。2.3Lこは付いていない。 | 写真は、2.5Lのエキゾーストポートをタコ足側からみたもの。この部分に関しては特に違いは見られなかった。 |
「知っているようで知らない、スポエボ2.5Lとノーマルとの違い」 | |
ここからは排気系のパーツ。写真はタコ足の比較で、上が2.3Lで、下が2.5L。大まかなカタチは同じ様だが・・・。 | タコ足のエンジン側と繋がるフランジ部の内径(幅)を計測。これは2.3Lで、63.52mmであった。 |
エキゾーストポートが同じだったことから予想はできるが、2.5Lの方を計測してみると同じく65.32mmだった。 | 続いてタコ足部分のパイプ径(外径)を計測。2.3Lの43.09mmに対し、写真の2.5Lの方は51.47mmであった。 |
次にタコ足の2から1に集合した部分のパイプ径を計測。2.3Lの48.29mmに対し、写真の2.5Lの方は55.16mm。 | 今度はタコ足のマフラー側のフランジ部分を比較してみる。見るからに大きい右が2.5Lで、左が2.3Lのものだ。 |
そのフランジ部分を計測してみた。2.3Lの方は内径が47.87mmで、フランジの幅は185.66mmであった。 | 2.5Lは内径が54.29mm、フランジ幅は188.29mm。仮にスポ工ボのマフラーがあっても2.3Lこは付かないことが分かる。 |
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