雑誌掲載記事 | |
BMWER(vol.17から引用)#2 | |
ACTIVECAR'S アクティブカーズ 整備日誌 アクティブカーズの代表小川氏は、 BMW正規ディーラーの元工場長。 その小川氏の腕を頼って、 調子を崩したBMWが各地からやってくる。 |
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そんなアクティブカーズの日々の業務の 一端をご紹介する。 |
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今回の依頼は、E30M3のミッション、 ゲトラグ265/5のトラブル。 異音がするということだが・・・・・・。 |
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「すべてのE30M3のMTに起こりうるトラブルとは!?」 | |
今回、お届けるのは、E30M3のマニュアル・ミッションのトラブルシュートである。そのM3は、アクティブカーズのお客さんのクルマだが、ミッション自体は2回ほど前の車検の際、他店で載せ換えられたメーカー製のリビルトミッションである。今回そのミッションが壊れた。走行距離は5〜7万kmであるにも関わらずにだ。 そのマニュアル・ミッションは、より具体的に言えばゲトラグの265/5と呼ばれるクロスミッションの方。症状は、異音だ。すべてのギアで音がでるということで持ち込まれた。小川氏が試乗してみた際も、最初は小さな音でわかりずらいのだが、走っているうちに徐々にガラガラと音がしたそうである。どちらかといえば、低速の方が分かりやすく、ローで発進しても、2速で発進しても、ガラガラで始めて、エンジンブレーキでも音がでたそうだ。 その昔の発生箇所がミッションだと特定できたのは、試乗の際に、サウンドアナライザーのようなものをつけて、エンジン、プロペラシャフト、デフと、回転部分をすべて調べ、ミッションからが一番音量が大きかったためだ。最終的には機器をミッションを中心に各所につけて、切り替えしながら聞き、ミッションに間違いないことを確認したそうである。 この段階で小川氏は、オーナーの話、音や音がでる情況から経験的に判断して、音の発生箇所をあそこだろうということが想像ついていたそうである。で、今回、オーバーホールに着手し、ミッションをバラしてみて、その判断に間違いがなかったことが確認できた。音の発生箇所はベアリング。カウンターシャフトのリア側にあるベアリングのインナーレース部分に、音の原因が目視でもはっきりと確認できたのだ。そこはボールがあたる面であるから本来ならきれいにメッキ処理されているはずが、メッキが剥がれざらざらした地がでていたのだ。問題はそれが何故起こったのかということだが、オーナー氏は定期的にミッションオイル交換をされていた方。それから、考えられるのは、工業製品につきもののバラつき、品質の悪い部分が引き起こしたことではないか、ということだ。小川氏自身、BMWを長年整備してきた中で、昔の方がベアリングの質が良かったように感じない訳でもないともおっしやる。そうそうあることではないが、そういうことはどのE30M3のミッション、ゲトラグの265/5だろうと、265/6の方であろうと起こりえることだそうだ。M3と言えど、工業製品にかわりなく、そうしたトラブルは、出る時には出るものなのだ。でもその反面、20万kmを越えても全然使えているミッションが何機も存在している訳で、オーナーがしかるべきことをやっていれば、さほど悲観的になる必要はないはずである。 |
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ミッションをオーバーホールするにあたり、オイルを抜こうとドレンを外すと異様な量の鉄粉が……。何か起きている。 | |
以前はリビルトもあったが、今は現物を本国送りするしかなく、それでは時間がかかるためオーバーホールすることに。 | |
BMWのミッションは精緻であり、かつスペシャルツールが必要なため、どこもでオーバーホールできるわけではない。 | |
小川氏が推測していたベアリングが見てきた。そこはミッションケースの中で一番下の部分で、鉄粉等の影響を受けやすい。 | |
そのカウンターシャフトをケースから外し、回して点検してみるとジャラジャラと異音が。新品はそんな音はしない。 | |
カウンターシャフトからも外し点検してみると、インナーレースにメッキの剥がれた箇所が見つかった。それが写真左。写真右の正常な部分と比べると違いは見た目にも明らか。 | |
ミッションには写真の様なパイロットベアリングが多数存在。フルOHなら即交換だが、リピルトでもあり、点検し再使用。。 | |
ベアリングは計4つを交換。組み立て後を報告すると音はキレイに消え、スパスパ入るミッションとなったそうだ。 | |
組み立てにもアクティブカーズならではの工夫や一手間が沢山ある。これは始動一発目の潤滑を考えての処置である。 | |
ゲトラグのミッションの組み立てにはシム調整が必要。特にメーカーの指定値があるわけではないので経験がものを言う。 | |
日本車はシンクロが減るが、BMWはギアが減る!? | |
E30M3のマニュアル・ミッションのトラブルとしては、今回の様な音以外だと、入り難いというのがある。基本、ギアの入りを良くするとか、改善するのは難しいが、オーバーホールで対処できるそうだ。ギアの入り難さは、巷では、原因はシンクロと言われている。でも、クロスの265/5、オーバードライブの265/6であれ、ゲトラグのオーバーホールを実際にやっている小川氏によれば、シンクロではなく、その相手側のギアの方が問題だという。つまり、日本車の場合はシンクロが減って入り難くなるが、BMWの場合は、その逆で、シンクロは全然減らないでギアの方が減るそうである。ちなみに、サーキットユースでミッションが鳴いたり、入り難いという場合は、オーバーホール時に、ミッションに担保を持たせる方法を提案することもできるそうである。 | |
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